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Discovery Tradition in Japan #7 酒井 英臣(さかい ひでおみ)氏

「Discovery Tradition in Japan」は、様々な形で伝統文化と関わりのある方にお話を伺うインタビューシリーズです。活動やその裏にある想いから伝統文化の輪郭に迫っていきます。ジャンルにとらわれずご紹介していきますのでどうぞお楽しみに。

家の食器は有田焼?美濃焼?はたまた?

竹村(JCBase:本日は、株式会社カネスの酒井英臣様にお話を伺います。美濃焼きと言いますと伝統的な焼き物だということを想像する中、焼き物のストローというチャレンジなお取り組みをされておられ、そのバックグラウンドや想いを伺って参りたいと思います。

酒井氏:よろしくお願い致します。

竹村:焼き物のストローと言っても、直ぐにイメージが湧きにくいですが、色々とお話を伺わせて頂ければと思います。まずは、株式会社カネス様がどのような事業をされていらっしゃるかというところを伺わせて下さい。

酒井:株式会社カネスは業務用の食器を卸販売している会社で、美濃焼きの地にあります。産地にある一次問屋という立場で、メーカーさんから色々な食器を仕入れて問屋さんに卸すということをメインでやっております。ネット販売もしておりますのでダイレクトに販売することもありますが、どちらかと言いますと、例えば、ホテルさんですとか、旅館さんですとか、外食チェーン店さんからのご依頼に応じて、食器を選定してみたり、もしくは無いものは作ってみたりとかしながら販売しております。例えば、こういうお店を作るので、そのコンセプトですとか、メニューですとか、客席が何席あるかっていうことを提示頂いて、後はお任せするので提案して下さいというパターンがよくあります。

竹村:なるほど、様々な提案力を問われるってことですね。私だと、美濃焼きは茶の湯で言うと、安土桃山時代に一世風靡したというイメージで見てしまいます。お客様は今の美濃焼きをどう見られているのか、歴史的な背景や一般的な話も踏まえて、教えて頂けますでしょうか。

酒井:今、皆さんがご家庭で使われてる食器の多くは美濃焼だと思います。皆さん、美濃焼っていうことを知らずに買われていることが多いと思いますが、ご家庭で使われてるような食器ですとか、どこかに旅行に行かれた際に泊まられたところで出てくる器は有田焼も多かったりします。有田焼か美濃焼というところがかなり多いです。実は、美濃焼の厳密な定義は存在しないのですが、イメージとしては織部などに代表される抹茶茶碗が特に多かったりします。当社は岐阜県の土岐市にありますが、土岐市、隣の多治見市、瑞浪市あたりで生産されるものを総称して美濃焼と言うのではないかと思います。その産地で生産されるものが食器シェアの約半分ですので、皆さんのごく身近にある食器が美濃焼きであることがかなり多いのかなと思います。

Japanese Pottery – Bowls & Plates

竹村:では、今日のメイン「美濃焼きのストロー」の話にどんどん入っていきたいと思いますけれども、この美濃焼きのストローは、具体的にはどういったきっかけでプロジェクトとして立ち上がったのでしょうか。

酒井:実は、美濃焼きのストローを作ろうと自ら思ったわけではなくて、あるお客様からストローを陶器で作れないかというお話を頂きました。そのお客様が打ち合わせをカフェで長時間されていた際に、ストローがふにゃっとしてきたりですとか、そのせいか味が変わってしまうイメージがあったようで、それで、陶器で作れないかというお話を頂いたのがスタートだったんですけれども、初めは、ストローは無理でしょうという感覚で、即答でお断りしました(笑)。

竹村:断ったんですね(笑)。

酒井:もう絶対無理でしょっ!ていうことがありましたので(笑)。

竹村:焼き物でストローを作れるのか?と私も思ってしまいますけど、そこは酒井様も同じ思いだったのですね。

酒井:はい。食器類、お皿、茶碗、湯飲みですとか、そういうものを作る工程を想像すると、このストローという形状のものを作る方法は、全く未知の世界で見たことがなかったので、不可能だと思いました。

竹村:それがどうしたわけで、今のこういう状況になったのでしょうか。

酒井:その後、ずっと気になってまして各方面へ打診してみたんです。色々なメーカーさんに、こういうことを出来ないでしょうかみたいな話を持っていったり、色々と相談しましたけれども、大半の回答は「無理でしょ。」というような状態でしたので、ちょっと意地になって、作ってみようと思い始めたのがきっかけです。会社的にはメーカーではないので、そういう円筒状のものが出来る技術を持っているところを当たって相談させて頂いて。最初はですね、長さが2.5センチか3センチぐらいで分厚さが2ミリぐらいあるような土管か!というものが出来上がってきまして(笑)。これは、実用的には難しいなと思ったのですが、形としては出来る技術があるなっていうところがありまして、そこから数ヶ月ほど試行錯誤して、さらに細くしたり、薄くしたり。陶磁器というものは割れてしまうということが最大のデメリットとしてありますので、なるべく強度を上げられる素材がないか手伝ってもらいながらというのがスタートです。

竹村:意地になるということはキーワードだなと思ってまして、出来ないことをやってみようかなと、心のどこかで思われていたということなんですよね。

酒井:頼まれたことはなんとかしてあげられないかなというところもあり、自分との戦いじゃないんですけれども、本当に意地です。出来上がるかどうかはわかんないんですけど、なんとかできないかと思いまして。

竹村:もちろんそこに投資が必要なわけですが、まずはやってやろうかということですよね。

酒井:はい。物を作るということが元々好きなので、結構な無茶をしました。最初に色々と買い込んでいくためのお金は必要ですし、やってる途中でやっぱり不可能ではないかと思うこともありました。最初に先行投資が必要になりますが、回収できる見込みがあるかないかということは一切考えていなかったです。やれるところまでやってみて、その後、考えれば良いかなという感じです。

SDGsとはなんぞや

竹村:世の中がエコの意識が高まってプラスチック問題に対応している中で、ストローが紙だとふにゃふにゃになってしまうという悩みは、皆さん抱えていらっしゃると思いますが、当時、プラスチックを意識されていらっしゃったのでしょうか。

酒井:お声掛けを頂いた当時の2018年頃は、SDGsという言葉を僕も知りませんでした。エコですとか、環境対応型の観念ですとか、サスティナブルという言葉も、ほとんど分からないような状態で、認知度は低かったとは思うんです。このストローを作っていくにあたって、そういう言葉を色んな方面から聞くようになって勉強を始めて、世界中がそういう方向に向かってることを初めて認知したという感じです。それまでは、特に商社という卸売りをしてるような会社ですので、利益をどんどん追及していけば良いかなと思って、一所懸命に突っ走るような形で会社を運営してきました。ただ、このストローに携わってからは、SDGsとはなんぞやということになり、初めてそういうことに気づいたという面はあります。

竹村:なるほど。お話を伺って思ったのは、色々なことを錯誤されながら、ストローという商品と、それにまつわるストーリーが一緒に成長していきながら商品化に向けて進まれていったということなんですね。単純にハードだけを作るということではなくて、投資をするとか、SDGsとか、そういったストーリーも学ばれながら育て上げていらっしゃるイメージが凄くします。

酒井:今まで環境のことを考えて製品を作るなんていうことは、全く無かったものですから、このストローを作る過程で、様々な知識が増えましたし、企業としてあるべき姿と言いますか、最近は持続可能型ということが全てにおいて大事だなって思ってます。

美濃焼きストローの挑戦

竹村:ハードとしての完成に向けて、割れないようにするとか色々なことをされてきたと思われますが、ブレイクスルーになる技術や考え方みたいなものはあったのでしょうか。

酒井:ブレイクスルーと言うよりも、もう日々のハードルが凄く高いんですよね。普通のお茶碗を作りますというハードルよりも、全てにおいてまずその形を作るという製造の成型の工程においても全くできないものでしたので、そこをなんとかしなくてはならないと。それと、最初はストロー自体が凄く曲がっていて、とても使い物にならないというか、均一性も全くない状態ですし、後は、例えば、食器とか、製造の工程は基本的に一緒なんですけど、素焼きをして、そこから絵付けをしようすると、強度を上げれば、上げるほど、素焼きをした段階で水を吸わないんですよね。水を吸わないと絵が付かないので、どうやって絵を付けたら良いのかですとか、釉薬をかける工程においても、なかなか吸わないので、ずっと乾かないような状態なんです。それを、どうやって乾かしたら良いのか、どういう風にその釉薬をまずそのストローに乗せたら良いのかというようなことから、 全てにおいてハードルが高かったので、一つ一つを崩していくような感覚でやっていました。

竹村:焼き物をご自身でやられた方は、多分、今の釉薬や素焼きのイメージが着くと思われますが、一般的なそのプロセスというものを教えて頂いてもよろしいでしょうか。

酒井:簡単に申し上げますと、粘土で形を作るという工程がまずありますよね。この形が出来上がりますと、それを乾燥させます。乾燥させて水分がかなり無くなった状態の後に、通常ですと、素焼きという工程をします。まずは一回800度ぐらいの窯で焼くことなのですが、中の水分をさらに少なくすることの理由としては、絵付けをしやすくする、釉薬を乗せやすくするために素焼きをします。そして、出来た素焼きに対して、筆で絵を書いたりですとか、呉須と呼ばれる絵の具で絵を書いたりします。その後に、今度はその「うわぐすり」っていう、釉薬と呼ばれるものをかけてから、窯に入れて本調整をします。本焼きって呼ばれるものなのですが、1200度から1300度ぐらいの釜で焼き上げると、皆さんのお手元にあるような食器が出来上がります。

素焼きしたストローに下絵付けをしている様子
釉薬を塗っている様子

竹村:酒井さんは、とても簡略化してお話してくださっていますが、ものによっては何十工程もあったりする中で、その工程をある種イノベーションしていくということにチャレンジされたということなんですね。

酒井:そうですね。基本的には、まずこの形を作るということが出来なかったので、それが出来る方達に相談しながら、ある程度そういうものが出来るというようになってきた後に、今度は素焼きをして、絵付けをするわけなんですけれども、例えば、お茶碗ですと、高台の裏は釉薬が付いてないので白くなってざらざらしていると思うんですけれども、どこかに設置する場所がいるんですよね。釉薬を全面にかけてしまうと、窯で焼く時にガラス質なのでそれが溶けて、この設置している棚板にくっついて剥がれなくなっちゃう、無理やり剥がそうとすると、割れちゃう状態になってしまうので、そこをあえて剥がすんです。剥がしてからこの棚板に乗せて焼くという。簡単に申しますとそんな感じなんですけれども、では、ストローをどのように焼けば良いのかというようなところからありました。そういう技法が存在しなかったので治具や道具類も全部作らねばならなくて、そこから全てを用意したような感じです。うちの会社には窯が無いのでメーカー(窯元)さんに行きまして、そこで焼ける状態にセットアップしてこの状態で焼いて下さいという形で置いてきて、焼き上がったものをまたそのままの状態にしておいて下さいということで、それをさらに回収してきて、製品にしているのが現状です。

竹村:それはもう卸ではなくて直接やられてるってことですね。

酒井:そうですね。大半の工程も社内でやっているのが現状です。色んな部分で、メーカーさんにお願いするとコストが合わないと思います。後は、1個1個相当丁寧に作りますので、そういう細かい作業というところもメーカーさんに頼んで商品を作って流そうとするとイレギュラーなことになったりするので、なかなか出来ないというところがあります。

竹村:本当に1つ1つに時間をかけて創意工夫されていることが凄いと思います。この美濃焼きという歴史の中で、安土桃山時代の茶陶では、漆黒の黒織部ですとか、釉薬のかけ方であったりとか、技法含めて創意工夫されてきたのだと思います。昔は茶陶の話だったかもしれないですけど、今は500年ぐらい時を経てSDGsという流れの中で、何回でも使えるものを焼き物で作って欲しいという新たな世の中の期待や想いを形にされたのは改めて凄いことだと思います。

テレビ取材後の反応 ここから…

竹村:実際に完成された時のお客様の反応はどうだったのでしょうか。

酒井:めちゃくちゃ嬉しかったのが、テレビ取材を何回か受けさせて頂いて、そういうものがあることを知って下さった方から、お電話を頂いたことです。2017年頃の話でして、海洋プラスチック問題で、亀の鼻からストローが出てきて、それを無理やり抜くシーンに心を痛めてらっしゃる方が世の中いらっしゃって、美濃焼きストローを買われたお客様から会社にお電話を頂いて、「こういうものを世の中に出して、作って頂いて、本当にありがとうございました。」って、泣かれてるような状態で、お礼を言われた時には、なんかこうグッとくるものがありましたね。それが1人だけではなくて、数人、その日だけでもお電話を頂くことが出来まして、やって良かったなとその時は思いました。

竹村:今回の酒井さんの新しいチャレンジが、いわゆる社会の課題を解決していくことに繋がっていってますよね。伝統的な技法というところがありながら、美濃のルネッサンスとして、今まで色々な変化というのはあるけれども、もう1回、酒井さんの新しい取り組みが歴史を超えて、ぐるぐると動き出してるような不思議な感覚を私は今すごく思っています。

酒井:ありがとうございます。

竹村:伝統の中の未来へのインスピレーションみたいなものを凄く感じました。

酒井:ストローは、デザインが100種類くらいあるのですが、そのストローの中で取り入れている絵付けの方法は、色々なパターンでやらさせて頂いておりまして、それが現状、例えば、お茶碗ですとか、お皿とかに使われてるような技術を全てそれぞれ取り入れてやっているような感じで、様々な方面に協力を仰いで、色々な方法で絵付けをしています。社内で勿論やることもありますし、それ以外のところは、お茶碗などに使っていた技法をこのストローにも取り入れて絵付けをしています。手書きの上に、絵を付けてデザインしたストローやそれ以外にもカラフルなものがあります。鉄のサビで絵付けをしてドット模様をつけて行って、少しアイボリーの釉薬をかけると、カラフルなストローが出来上がります。また、素焼きの上に、銅版転写と言われるものを貼ってその上に釉薬をかけて焼き上げるものもあります。逆に、上絵付と呼ばれるものがありますけど先に無地のストローに釉薬をドボンとかけて先にストローを作っておきまして、その上からいろんな柄を転写して絵を付けるという技法を使ってのデザインがこの辺りのストローになります。他にも色々ありまして、少しキラキラするラスターと呼ばれる絵付けの方法があります。こういうものは、一般的に割烹の食器で使われる技法なのですが、そのような技法も取り入れて作ってるのが現状のストローです。各方面に協力して頂いております。

竹村:本当にこうやってまた美濃が注目を受けて、まさに価格競争ではない何かが生まれてこなきゃいけないと思います。そういえば、ちゃんとご紹介してなかったですが、商品としてはMYSTROいうものになるのですね。

酒井:はい。こんな感じの商標でMYSTROとなります。

竹村:皆さん、是非ともネットでご覧下さいませ。色んな柄があって、見てるだけでも楽しくなるようなストローですし、さらに素晴らしいのがストローを洗うためのブラシもついてくるところです。

酒井:はい、ブラシをストローに入れて洗って頂くことが出来ます。そして、強度がめちゃくちゃ強いので割れにくいです。どれくらい強いかと言いますと、素材の強度としましてはマグカップの2.5倍以上あります ですので、例えば、ストローでマグカップを叩いていると、マグカップの方が割れます。タイルカーペットが敷いてあるような状態で、落とされた時でも、十中八九は割れることはないというくらい強いです。ですので、意外と割れることは無くて、どちらかというと金属的な音がします。強度はありますが、薄く作ってありますので、ストローとして違和感なく使って頂けるようになっております。

竹村:実験は自己責任で、皆さんよろしくお願いします(笑)。飲み口も禿げなそうですね。

酒井:はい。あと熱伝導率が非常に高いので、アイスコーヒーなんかに挿して頂くと、ストロー自体も中に氷が入っていれば同じような温度まで一気に冷えます。ですので、ストロー自体も、飲み物の温度を感じることが出来るような状態になっています。紙やプラスチックはあまり熱が伝わってこないので、中がどれぐらい熱いのか、冷たいのか分からないと思うのですが、MYSTROですと、ストロー自体が同じぐらいの温度まで一気に冷えていきますので、飲み口も若干変わってくるとは思います。ホテルさんからもお問い合わせを頂くことが最近増えてきておりまして、ラウンジで使われて、販売もしたいというようなご依頼を頂いたり、ホテルのロゴマークを入れてもらえませんかのようなお話を頂いたりします。

竹村:伝統が伝統のままですと、ある種過去のものみたいになってしまいますが、伝統というものを酒井さんのようにチャレンジすることによって今の価値に変えるとなると、伝統が今に生きてきて、そこに対して、きちんと評価がされる。それは付加価値に対して対価を払う、挑戦に対してリスペクトを示すということかと思います。この伝統を次世代に繋げていくことは、本当に大きなキーワードで、酒井さんだけの頑張りだけでなく、それを我々が素晴らしいね、と素直に伝えていくことが出来ると、こういう新たなチャレンジがどんどん生まれてきますよね。我々自身がその伝統を次世代に繋げていくことに対して能動的な行動が取れることが大切だと思います。

酒井:ストローを作って思うのは、例えば、プラスチックのストローが紙に変わったりですとか、この陶磁器製のストローに変わったりすることで、本当にプラスチック削減に繋がっているのかということです。実際は、パーセンテージで言えば0.00何パーセントみたいな、ごく少量だと思っています。そのストローに使われてる全体のプラスチックの量からすれば、比率は凄く小さいですが、MYSTROを目にして頂いたり、実際に使って頂くことによって、皆さんの意識が少しでも変わって、物を買われる時に、これって本当に良いものなのかどうなのかと考えて下されば、非常にありがたいです。それと会社で、このストローを体験して頂きたいがために、カフェを作りました(笑)。

竹村:凄い(笑)。

酒井:実際にカフェでソフトドリンクを頼まれますと、美濃焼きストローを提供しております。絵付け体験も提供させて頂いておりまして、岐阜県の土岐市は、名古屋からですと、大体車で1時間ぐらいの場所なんですけど、わざわざその絵付け体験を目当てに来て下さることが凄くありがたいです。日々、ご自宅でストローを使って下さる方もいらっしゃいますし、知覚過敏の方が使って下さったり、様々なパターンの方がいらっしゃいますが、そういうことを通じてお話が出来たり、興味を持って頂いて認知して頂けることも非常にありがたいです。そういった皆さんの意識の変化がプラスチックの削減や、ゴミを拾ったり、ゴミを捨てないようにするとか、そういうことに繋がっていくんじゃないかなっていう気がしています。

「Dachi Cafe and U」

竹村:もし今回の酒井さんのチャレンジで、皆様にお伝えしたいことがありましたら、是非ともお話頂ければと思います。

酒井:今、会社を経営させて頂いていて思いますのが、プロ野球選手の大谷翔平選手は、姿勢は昔から崩れないですし、とても謙虚だと思うんですよね。グラウンドにゴミが落ちていれば拾って、それで運を拾うなんていうことで、そういう教育を受けられてきたということもあるかもしれませんが、何につけても感謝をしようということを、常々、スタッフの皆さんにお話しさせて頂いております。例えば、お客様からクレームを受けることがあったりですとか、嫌だなと思うようなこともあるかもしれないんですけど、感謝することで超ポジティブになれると思うんですよね。このクレームがあったということは、それで今後対応が良く出来るじゃないかというようにプラスに置き換えて全部自分を説得させていくというような、みんなでポジティブにやっていこうということを伝えております。美濃焼きの業界でも、ダメなことは沢山あるのですが、伝統技術がどんどんなくなってしまうので、チャレンジしながら、良いチャンスだということで、逆に感謝しながら、やれるだけのことはやってみようという感じで、日々やっております。

竹村:酒井さんの言葉を聞きながら、このMYSTROが何故生み出されたのか、美濃焼きが、また次の50年、100年と何故続いていくのかということの答えが見えたような気がします。貴重なお話をありがとうございました。

酒井:ありがとうございました。

対談者プロフィール

酒井 英臣(さかい ひでおみ)

株式会社カネス 代表取締役社長
美濃焼の地域に根ざした事業展開とともに、伝統と革新を融合させた新たなプロダクトによって、新たなユーザニーズを満たしつつ持続可能な社会づくりの貢献にも寄与しています。


竹村文禅

(一社)日本伝統文化協会会長。
現代、そして未来において、伝統文化が持つ価値をどのように見出し、次代に継承していくべきか。生活者の視点、企業人としての視点で、伝統文化の価値のリブランディングを目指し本協会を設立。

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