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企業内で日本文化の有志活動に取り組む高橋裕さん (前編)

「日本文化を愛する会」は富士通株式会社80周年記念事業の一環であるCollab(組織を超えたコラボレーション)活動の一つとして、2015年6月に設立された有志の会。茶・華道や歌、歌舞伎、能、狂言といった日本の伝統文化に関する座学や体験イベントを通じて、社内外の個人・団体との交流を行い、日本文化に対する理解を深め、人生を豊かにすることを目的に「知る」「繋がる」「発信する」という3つの柱で、約160名のメンバーで活動中。
創設者は、2002年に富士通株式会社に入社した高橋裕さん。普段は富士通のグローバルマーケティンググループに在籍し、同社のマーケティングに関わる仕事を本業としている高橋さんが、なぜ会を作ったのか話を伺った。

企業内で日本文化の有志活動に取り組む高橋裕さん (後編)

同僚のたった一言から生まれた活動

「富士通の高橋裕です」

高橋さんがそう言って取り出した名刺には「富士通株式会社 マーケティングコミュニケーション本部」と記されている。富士通における顧客とのコミュニケーション戦略をデジタルで実現する。それが、高橋さんの“本業”だ。

「これとは別に、こんな活動をしていまして……」

差し出されたもう1枚には“日本文化を愛する会 主宰”と書かれている。同社の80周年記念事業の一環で行われた組織間のコラボレーションを促進する活動Collab(こらぶ)の“有志の会”である。高橋さんが2015年に立ち上げた日本文化を愛する会では、次の3つの柱を軸に活動している。

  1. 知る
  2. 繋がる
  3. 発信する

高橋さんらコアメンバーが中心となり、日本の伝統文化のプロを講師に招き、業務時間外に体験型で学ぶイベントを中心に精力的に活動している。もちろん、時間外手当などの給与は出ない。実際この活動を始めてからは大変さを感じることもある。きっかけとなったのは、同僚の何気ない一言だったという。

「同僚の気軽な一言で始めてしまったんです。実は以前から、本業とは関係なく日本文化に関わる何かをしたいという思いは、ずっと持っていました。でも、結婚もしてプライベートも益々忙しくなる日々で、なかなか実現できていなかった。悶々としていたタイミングで、ちょうど会社の80周年事業のCollabが始まって、どんなテーマでも良さそうだったので友人に相談したところ ゛やっちゃいなよ゛の一言。このタイミングでやらなかったら、おそらく一生やらないだろうと思い切って、主管元である経営戦略室に設立申請を出しました」

会社の記念事業がきっかけとなり急拡大

「活動一年目で、メンバーが100名を超えました」

Collabという活動自体が、会社が認知しているオフィシャルなものであったという点も大きい。一方で、Collab自体は、高橋さんたちの活動以外にも多数の活動があるものの、所属メンバーという意味では「日本文化を愛する会」ほどの盛り上がりを見せている会はない。

「会社が認知しているというのは、メンバー勧誘という意味では大きかったですね。加えて、私たちの活動は、現代人の感覚からするとある意味ニッチなようにも思いますが、一方で一定数確実に興味のある人がいます」

Collab活動は、富士通本体だけでなくグループ会社からの参加も認められている。10万人を超える富士通グループのなかで、高橋さんと同様に日本文化のことをもっと知りたいと思いながら、一歩が踏み出せないでいたという人たちが一定数存在する。

活動そのものがコモングッド

高橋さんは、この活動を一緒に始めた同僚とともに、イベント企画と並行して一年目から積極的にメンバーを勧誘した。その中で感じたのは、日本人として日本文化のことをもっと知りたいというのは、普遍的な価値、共通善であることに思い至ったという。あるとき、社内で面白い取り組みをしているメンバー同士が集まって、会話をする機会があった際に、高橋さんがほかのメンバーに言われた一言がある。

「高橋さんの活動は、戦後の漂白された日本人にとって、とても意義のある活動だと思います」

高橋さん自身は、そこまでの思いを持ってこの活動を始めたつもりはなかったという。しかし、参加するメンバーにとっては、気軽な勉強会やイベントを通じて日本文化を体験し、知る機会を持てるということは、とても価値があるのだということに気が付いた。

「知らないことで興味が湧く。知ることでもっと興味が湧く。体験することでもっと知りたくなる。面白さを周囲に共有したくなる。そういう思いで活動を継続しています」

月2回3時間の稽古

こうした活動を始めた高橋さん自身は、表千家茶道の稽古に、月に2回計3時間程度通い続けている。

「何だかんだで10年近く続いていますね。10年といってもお茶の世界ではぺーぺーですが」

高橋さんが会社に入ったときに、研修のチームも寮の部屋も同じだった同僚が、高橋さんを日本文化の世界に引き込んだ張本人だとか。

「彼は、私が会社員生活を始めてから、いろいろなターニングポイントに登場するんです。入社して10年間は登山三昧の生活をしていましたが、そのきかっけを作ったのも彼です。そして、日本文化の世界に私が少しだけ関わるきっかけを作ったのも彼」

その同僚の一言をきっかけに、茶道を始めたという高橋さん。はじめは、会社の茶道部に通い、やがて外部の教室にも通うようになったとのこと。

「外の教室に通い始めたのはたまたまなんですが、結果的には良い先生に巡り合えたと思いますし、得難い人脈もできました。社中の皆さんは、それぞれ講師資格をお持ちですので、これからもお互いに茶の道にかかわって研鑽をしていきたいですね」

 

有志の会として、社内の横のつながりを強化するという会社の取り組みに則りながら、日本の伝統文化というある意味難しい領域で様々な活動を模索してきた日本文化を愛する会。その先には「日本伝統文化の世界を後世に繋げていきたい」とする思いがあった。高橋さんたちはどんな未来の可能性を描いているのか。後編では活動の将来像について伺う。

企業内で日本文化の有志活動に取り組む高橋裕さん (後編) へ続く

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