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アールヌーボーに影響を与えた漆芸

19世紀末から20世紀初頭に開花した美術運動ヨーロッパアールヌーボーにも影響を与えた 「高盛絵(たかもりえ)」 。漆を塗り重ね立体的に形作る独特の技法である「高盛絵」を引き継ぐ七代目 金城一国斎氏をお招きし「高盛絵」の魅力と漆芸の見どころをユーモアを交え講演いただきました。

漆芸技法「高盛絵」

近代漆工芸史の中でひときわ輝く個性美を放ち続ける独特の漆芸技法で、花や果実に誘われる蜂や蝶それを狙うカマキリを生き生きと立体的に表現するなど独特の世界を創り上げ、アールヌーボーにも影響を与えました。広島で発展したこの技法は、歴代金城一国斎が一子相伝で受け継いでいます。

金城一国斎という継承

1811年に初代金城一国斎が尾張藩の御用塗師で時代蒔絵を得意としていました。2代目は尾張を出て研鑽の旅へ。様々な刺激を受け「高盛絵」を考案するも眼病に悩まされ、名医がいるという噂を得て一路広島へ。3代目が、「高盛絵」の技法を確立し、国内外で人気を博します。4代目で、ヨーロッパでも人気を博しアールヌーボーにも影響を与えました。5代目は7代目の祖父にあたり、実際幼少の頃から父である6代目の制作の様子を見ながら育ち、自分も漆芸の道へ。高卒後石川県の輪島か香川県の高松漆芸研究所の二択で高松へ。結果オープンで手厚い環境に恵まれ、制作の学びに勤しめた矢先の5年後、6代目が急逝し一週間後に5代目も逝去し、7代目は26歳で世襲しました。

4代目以降、一子相伝で引き継がれるとはいえ、一緒に作業をしながら見て学ぶことが主。7代目も、高盛絵を制作しても剥がれてしまったり試行錯誤10年の末にようやく会得出来たそうです。

留まってはダメだ、常に変化し続ける挑戦

5代目6代目の急逝により、失意の中、気分転換にと南国へ母親が送り出してくれたことが転機となります。南国の波にインスパイアされ、白い卵の殻と青のグラデーションで表現した「輪廻」を制作。青のグラデーションで10色をそれぞれ3回ずつ合計30回も塗り重ねていきました。

自分を、アーティストや作家そして匠でもなく、漆芸家だと語る7代目金城一国斎氏。「毎回毎回常に新しいものを追い続けています。留まっていてはダメだ。常に変化し続けなければなりません。トキメキがないと何も伝わらないのです。柳が風に吹かれて心が動いた、その瞬間を忠実に表現しようと心がけています。」

その技術とデザイン性に魅了され、車メーカーのマツダやジュエリーの4℃などといった、様々なコラボレーションの引き合いも増えていきます。

初めて入選して以来、常に工芸展で入選しなければならないプレッシャーとの闘いは壮絶ではあるものの、50代を過ぎてようやく吹っ切ることができ、普遍的な森羅万象のテーマのなかで、心が動かされたものを忠実に表現しようという域に達することが出来たそうです。

「触って良いのですか?!」本物を鑑賞できたJCBaseの講座

今回は特別に2作品お持ちいただき、実際に触れる機会を頂きました。講座後に講師との懇親会があるのも、JCbaseの魅力の一つです。

本日のお菓子

JCbaseの講座では毎回休憩時に素敵な茶菓子が提供されます。本日は、萬年堂本店「御目出糖」です。なんともおめでたいそのネーミングは、赤飯の様な見た目より命名。江戸時代・元禄より伝わる家伝の仕様書により、小豆あん・餅粉・米粉などに、大納言の蜜漬けを散らし蒸し上げており、もちもちとした独特の食感が特徴です。また、金城一国斎氏から広島土産「川通り餅」を頂きました。

七代目金城一国斎の作品に会える!

毎年二回上京されるうちの一つがこちらの「日本伝統漆芸展」 2020年1月8日(水)~21日(火)西武アート・フォーラム(西武池袋本店6階中央B8)で開催中(現在終了)。


書いた人

ルミコ ハーモニー
アーティスト。世界の様々な芸術に触れるにつれ、如何に日本の芸術が世界に影響を及ぼしているのかを実感。2019年末に「アートだるま展」を主催した際に、一般社団法人日本伝統文化協会の後援をきっかけに、日本伝統文化を学び始めた一年生。
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