沖縄の伝統工芸の一つに、紅型(びんがた)という染物があります。
鮮やかな色彩、生き生きとした植物や波の図柄などが特徴的で、沖縄の気候風土や文化に育まれた華やかさと美しさを兼ね備えています。今回は沖縄出身の筆者が、日常で触れてきた紅型の魅力についてお伝えしたいと思います。
紅型の紹介
始めに、紅型について、知念紅型研究所さんの説明をお借りしてご紹介します。
紅型(びんがた)は沖縄の豊かな自然や特色を鮮やかな色彩や図柄で表現した、最も代表的な伝統的手染物です。戦前までは琉球衣装として、戦後には和装として多く染められ、戦前以上に全国へと広がっていきました。
知念紅型研究所 より引用
起源は15世紀ごろまで遡ることができます。中国やインド、ジャワの更紗などの染色技術を基に紅型が生まれたとも言われています。
日常の中の紅型
沖縄と縁のある方や、旅行で訪れたことのある方は、どこかしらで実際に目にしているかもしれませんね。
染物ではありますが、布製品だけではなく、紅型のデザインが施されたクリアファイルやポストカードなどの文房具や、食器などを見かけることもあり、沖縄を象徴するものの一つとして、広く普及しているように感じます。以下は私が愛用しているクリアファイルです。
伝統工芸に触れる
私が本格的に紅型と出会ったのは、小学校4、5年生頃の図工の授業。
教材はB5程の小さな布でしたが、校外から先生を招き、型を彫るところからスタートして工程を一通り網羅した本格的なものでした。それまでも紅型の存在は知っていましたが、自分で作ることができたこの体験はとても楽しく、大人になった今でもよく覚えています。
特に印象に残っているのが、色を入れていく「配色」(「色差し」とも言う)と、濃い色でアクセントをつける「隈取」(くまどり)の工程。
「配色」は画用紙に絵の具で色を塗るのとは違って、布に色がしっかりと染み込むように、細いブラシのような専用の筆でゴシゴシと塗り込んでいく作業です。どの色にしようか迷いながら、夢中になり楽しく塗っているうちに、その日の授業時間が終わりに近付いてしまい、急いで片付けをしたことを思い出します。
↑カラフルに染めていきます!(知念紅型研究所さんのホームページより)
「配色」の次の工程「隈取」では、既に色が入った部分に重ねるように濃い色を乗せていきます。これにより、陰影やグラデーションを表現することができ、図柄に立体感が生まれます。「隈取」が加わることで、子どもや初心者でも、かなり本格的な見た目の作品に仕上がります。(もちろんプロには敵いませんが!)
そうした工程を経て完成した作品は、粗さは目立つものの、しっかりと鮮やかな色に染まりました。
楽しみながら地元の伝統工芸を学び、実際に体験できたことは、私の色彩感覚に豊かな彩りを与えてくれました。
ちなみに大人になってからも「あの楽しさをまた味わいたい…」と、カルチャースクールの紅型教室に通ったことがあります。この時は図案のデザインから自分で描き、トートバッグを染め上げました。童心に帰り、これまた夢中で取り組んだ3ヶ月間。確か社会人2年目で、まだまだ不慣れな仕事も多くストレスフルな時期でしたが(笑)、良い気分転換になりました。
作品が今は手元にないため、画像でご紹介できないのが残念!
離れた場所の文化
現在私は沖縄を離れて生活しており、紅型に触れる機会は減ってしまいました。
それでも、美術館の展示会などで紅型が取り上げられる際は足を運んでみたり、できる範囲で楽しんでいます。
特に楽しめたのが2018年のこちらの展覧会。
琉球 美の宝庫(サントリー美術館)
紅型だけでなく、琉球王国時代の絵画や漆器なども展示されており、沖縄の芸術を総合的に鑑賞することができました。
今年の夏は、遠出を控える方も多いかと思いますが、身近な美術館に行ってみたり、工芸品や食べ物をお取り寄せしてみたりして、離れた場所の文化を味わってみるのも良いかもしれませんね。