文化財・社寺修復を手掛ける塗師の旅がらすによるコラム長期連載です。シリーズタイトルは「旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~」。様々な季節、日本各地の街並みを探訪、古の遺構にも目を向け、社寺修復塗師ならではの視点で綴っていきます。肩の力を抜いてお楽しみいただければ幸いです。
蔵と運河のミツカン王国 ―愛知県半田市―
先日、知多半島中部の町、半田へ行って来た。普段町歩きは大抵ひとりなのだが、今回は東京スリバチ学会の皆川会長が名古屋に来られていたこともあり、会長と名古屋スリバチ学会の方々に同行させて頂いた。スリバチ~と言っても、すり鉢の生産組合とかそんなんではなく、スリバチ状の窪地や谷地形をいたって真面目に調査・研究している方達の集まりだ。
今回、岡崎の仕事で愛知へ来て、今で3ヶ月近くになるが、正直半田に行くことはないと思っていた。数年前会社の仕事で半田にある山車の修復があったのは覚えている。小さな仕事で関わってもいないので何をやったのかは知らないが、半田という町に関しては、山車を曳き廻すまつりが有名なのだろうという印象と、どこら辺にあるかくらいは昔から知ってはいた。しかし、近隣の名古屋の人でさえあまり行くことはないというこの町は、実際訪れてみると、蔵と運河に囲まれた歴史情緒漂う不思議な魅力の町だった。
そしてそこには、旧花街とおぼしき建屋がかつての形を残したまま並んでいた。