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生田流箏曲師範による「日本伝統音楽を愉しむ」講演会

生田流箏曲師範による「日本伝統音楽を愉しむ」講演会

柳内伝統音楽・文化院主宰/生田流箏曲師範 柳内 麻貴(やないまき)

3歳より生田流筝曲を、18歳より地唄三味線を父である家元:柳内調風氏に師事。様々なジャンルの楽器や、アート作品とも共演を行い、和楽器の伝承・普及に努める柳内伝統音楽・文化院の柳内麻貴様をお招きし「日本の伝統音楽」の魅力をご講演いただきました。箏・三味線・尺八のそれぞれの楽器の歴史や、独特な楽譜の見方など、伝統音楽の楽しさに迫るとともに、お持ちいただいた楽器による演奏体験もすることができました。

伝統音楽楽器に迫る①「箏(こと)」と「琴(こと)」

お琴と一般的に称されることが多いですが、実は 「箏」と「琴」は別の楽器なのだそうです。最大の違いは、箏は柱(じ)と呼ばれる可動式の支柱で弦の音程を調節するのに対し、琴は柱が無く弦を押さえる場所で音程を決める点。 箏には13本の糸が張られています。日本では奇数がベースになることが多いです。例えば、1月1日、3月3日、5月5日、7月7日といった日をハレの日にしたり、七五三のお参りや、三三七拍子、俳句の五七五など枚挙にいとまがありません。

龍になぞらえられる「箏」

箏の各部位は龍に因んで名づけられています。箏の右側を「龍頭」、左側を「龍尾」、弦を支えている部分を「龍角」、弦が出ていている穴を「龍眼」、胴体を「龍甲」と言います。お箏を数える時は、「一面」「二面」と数えます。

弦の音程を調節する可動式の柱・ 柱(じ)

京都の銘菓「八ツ橋」はお箏の形!

昔、八橋検校(やつはし けんぎょう)という方がいらっしゃいました。検校とは、盲目の方の最高位の役職名でいわば社長みたいな感じだそうです。江戸時代幕府は盲目の方に、お箏を弾く専売特許を与えました。(針きゅうあんま師も盲目の方の専売特許だったそうです)その、八橋検校に因んでニッキを加えて焼き上げた煎餅を箏型にして「八ツ橋」と呼ばれ京都の一大銘菓として現在も人気となっているという説もあるそうです。(後に「生八ツ橋」という焼かずに食べれる三角の生菓子も生まれました)

セバスチャン・バッハの先を行った「六段の調(しらべ)」

八橋検校の作曲の一つに「六段の調」があります。「六段に始まり六段に終わる」と言われるほど、「六段の調」は箏の初級者から上級者にいたるまで幅広く演奏される定番の曲です。 最初から弾いても、最後から弾いても同じ曲になるというトリックも組み込まれています。八橋検校は、ドイツの作曲家J.S.バッハが生まれた1685年に逝去。つまり、『六段の調』をはじめとする八橋の箏曲は、J.S.バッハよりも前の時代に作曲されたものということになります。

宮城道雄作曲「春の海」がお正月のイメージとして定着

お正月にあちらこちらで流れるのは、昭和初期に宮城道雄が作曲した「春の海」という箏と尺八の二重奏の曲です。瀬戸内海をイメージして作曲されたものですが、後にお正月用に使われたことで定着しています。フランスのヴァイオリン奏者である昭和7年にルネ・シュメーが来日の際に「春の海」を甚く気に入り、箏とヴァイオリンの二重奏として日比谷公会堂での演奏会が実現。更には、世界同時レコード発売となったほどだそうです。

日本伝統音楽に迫る②「三味線」

箏が検校の専売特許楽器であったのに対し、三味線は民衆の楽器でした。三味線は日本にしかないので海外からの留学生も是非三味線をやってみたいという希望が多いそうです。当時、弦には絹を使用されていたので、虫食い対策として「うこん」が弦に塗られている名残で、三味線の弦は黄色が主流です。

日本伝統音楽に迫る③「尺八」

尺八は、僧侶のみに演奏が認められていました。 真竹製で、竹の根に近い方を下管に使用します。名称は、標準の管長が一尺八寸(約54.5cm)であることに由来しており、世界でも長さを楽器名にしたのは他に類を見ないそうです。

楽譜を紐解く

実際に、お箏との楽譜を見てみましょう。元来、箏の楽曲は、盲目の方の専売特許であったこともあり、口伝で伝承されて来たのですが、流石に楽譜を作りましょうとして作られたそうです。漢数字と仮名で記されていますが、見慣れないのもあり、一日では到底マスター出来ないことは分かりました。

実際に箏を演奏手ほどきを受けることが出来ました!

「さくら」を恐る恐る弾いてみました。手ほどきを受けると最後には一曲弾けて、会場からは歓声が上がりました。しかしながら、不要な弦に触れてしまい不要な音が出てしまったり、独特の音の響かせ方などは、熟練のなせる技であるとも感じました。

最後に先生の演奏を堪能

集合写真撮影終了後は有志で懇親会へ。講師との気軽な交流もJCbaseの魅力の一つ。

本日のお菓子

JCbaseの講座では毎回休憩時に素敵な茶菓子が提供されます 。本日は、鶴屋吉信「福ハ内」。節分の日、商家の童女が豆まきをする姿を見て「福ハ内」が創案されました。福を呼び込むとされ、祝い膳に欠かせないお多福豆を意匠にしています。晴れやかな黄金色は、玉子の黄身の色。しっとりと柔らかな桃山生地に、白あんを包み込んであります。みなさんへ福が届きますように!

書いた人

ルミコ ハーモニー
アーティスト。世界の様々な芸術に触れるにつれ、如何に日本の芸術が世界に影響を及ぼしているのかを実感。2019年末に「アートだるま展」を主催した際に、一般社団法人日本伝統文化協会の後援をきっかけに、日本伝統文化を学び始めた一年生。
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