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The preservation of Japanese traditions #1  錦の伝統織物作家・当代 龍村周(たつむら あまね)氏

「The preservation of Japanese traditions」は、伝統文化を担い次代に繋いでいく“人”にフィーチャーしたインタビューシリーズです。様々なジャンルの日本の伝統文化のトップランナーをご紹介していきますのでお楽しみください。

古代から続く伝統文化・京都の「錦織

竹村氏(JCBase):「故郷を錦で飾る」「錦の御旗を立ててという話」「錦のような紅葉だ」などの表現が豊富ではありますが、具体的に「錦」ってなんでしょうか?

龍村氏:古来より日本人が美しいものを語るときの代名詞として「錦」が使われてきました。漢字を思い浮かべて頂くと分かりますが、金に帛(絹織物)が使われていて、金に値する織物であるという意味があります。「錦」は織物から来ている言葉なのです。単に織り方の話ではありません。

竹村:今京都で工房を構えられていますね。京都といえば、西陣織などが有名ですが、違いはあるのでしょうか?

龍村:西陣織も織り方の名前ではなく、商標名なんです。京都の伝統織物のカテゴリとして、西陣織と定められています。うちは、「錦織」として出しているということです。

竹村:「錦の御旗」という言葉がありましたが、「錦」という言葉は相当古いのですか?

龍村:錦自体は紀元前。。。一方、西陣という言葉は応仁の乱以来の言葉です。

竹村:なるほど。そんなに長く受け継がれているものを、龍村さんが引き継がれているんですね。

龍村:そうありたいですね。

織物は、様々な職人が織り成すことで生まれる芸術品

竹村:1200色の色糸を使ったことがあるとか?組み合わせて一つのものを作り上げていくんですね。工程はどういう流れですか?

龍村:大きくは三つに分かれます。まずは、農家さんがお蚕さんを育てるところから始まります。そして糸を作ります。製糸工場で糸に仕立てる職人さんがいたり、糸を染める職人さんがいたり。たて糸とよこ糸が必要なので、たて糸を織物の設計通りに作る職人さんがいたり。またその設計を一緒に作ってくれる職人さんがいたり。更に、機織りはいろんな仕掛けが必要なので、その仕掛けを作る職人さんがいたり。道具や金糸を作る職人さんがいたり・・・。

竹村:龍村さんが、指揮者やプロデューサーとして、様々な職人さんと作っていくという。その中で先ほどの話のような後継者の問題がありますか?

龍村:今世界中で起こっていますが、職人さんの継承が上手く行かず技術も素材も消滅の危機にあります。

竹村:浮世絵も江戸時代に開花した分業で様々な職人が関わって創り上げられる芸術ですが、錦織も様々な職人さんによって創り上げられる芸術ですね。需要と供給の問題があったりしますか?

龍村:やはりそれはありますね。

竹村:すごいですね。一つでも欠けてしまうと出来なくなっちゃいますよね。

龍村:色々危ないですが、杼(ひ)という緯糸(よこ糸)を経糸(たて糸)の間に通すために使う道具を伝統的な手法で作ってくれる職人さんが最後の一人となっています。お弟子さんはおらず、御年80代後半です。職人さんはいるので、道具としてはなくならないですが、伝統的な手法で作ることは困難になってしまいます。

竹村:それはお弟子さんが集まらないのですか?

龍村:いえ、職人さんが教えられないそうです。ご本人曰く「癇癪起こすからだめだ」とのことです。まあなんとか部品などの詳しいことを冊子にまとめることが出来たので、それはせめてもの救いです。

竹村:ヴァイオリンのストラディバリウスも、製法が分からないからどんどん値段が上がってしまっていますが、どうにもこうにも製法が分からないってそういうことなんですね。伝統を次世代に繋いでいくために、その文化が持っている考え方や理念のような本質を、体験を通じて気づき生活の中に取り入れられていくような循環サイクルを再構築していくことが求められているかもしれませんね。

現代に生きる伝統文化の「コラボレーション」と「現代美術」

竹村:先代まではプロデュースをメインでなさってこられていたと聞いていますが、周さんはご自身も機を織ることで、見えてきた境地があるのでしょうか。

龍村:職人さんと近くなりますね。それによって、職人さんの考えを理解したり持っている力を引き出して、制作に反映することができている面はあります。

竹村:コラボレーションなどにも積極的に取り組まれているそうですが、具体的にはどのような?

龍村:織物なので、いろんなことに関われまして、ギャラリー向けに作品を出したり、寺向けに文様を作ったりしています。

竹村:どのような人に伝えたいのでしょうか?

龍村:うちの本来の使命は、古代の織物復元と伝統文化である織物の文化継承なんです。父が一般財団法人日本伝統織物研究所を創設して、最近機織り体験というのも実施しています。子どもたちも伝統文化に触れる機会を作りたいと、機織り体験と工房見学を作りました。体験された方は本当に喜んで楽しんで頂けるので、この活動は非常に意味深く感じています。

竹村:機織り体験された方のお声ってどんなものがありますか?

龍村:みなさん本当に楽しいと言っていただけます。お子さんからご高齢の方まで。両手両足を動かして、集中して一定のリズムで織っていくので、心地よいという風に言っていただけます。機織り機は材木でできていますので自然を感じることもできて幅広い人にとって良い経験となっているようです。

竹村:単純に楽しいということを入口として興味を持ってもらうのはいいですね。

龍村:子どもは覚えるのが早くて。今までで小学生高学年の女の子が全世代で一番上手ですね。言ってもいないことをどんどんやっていて、見ていても刺激になりますね。

竹村:海外からは光の織物と呼ばれているとか?

龍村:はい。錦は光や角度によって織物の表情や質感が千変万化するのが特徴で、海外からも光の織物と賞賛されました。また、新しい試みとして、箔の織物を立体化したり、スプーンを作ったりして作品を作りました。イメージとしては折り紙のような。プラスアルファ現代アート仕立てにしたりもしています。職人さんに仕事が発注できるよう、アート作品を作ったり、イアリングやピアスなど日常で使えるものにして、より多くの人の手に届くようにがんばってます。

『太陽鳥』龍村光峯作 超古代、東アジアからベーリング海峡を経て南アメリカ に至るまで、モンゴロイド系の民族の歩いた道に、「渡り烏」の伝説が伝えられている。特に東方アジアのいわゆる「三足烏」は月に於ける兎と同様に、太陽に在って蘇りの象徴となっている。太陽が朝、東から出て、夕べには西に沈み、明くる日再び現れることから、「再生」の意味が生じたのであろう。我国では古神道に於いて、熊野神社の祭神として尊崇されている。本品は、特に韓半島に於ける古代の「三足烏」にヒントを得たが、近年のキトラ古墳の例のように、古代東方アジアの海と陸しかなく国境などに分け隔てること無く平和裡になされた国際交流の有様をいきいきと伝えてくれている。「三足烏」が今また平和な国際文化交流の象徴として蘇ることを祈って、錦上に織り込んだ。

織物は、「表」の美しさに着目されがちですが、実は「表」の美しさを表現するには「裏」の美しさが必要であるので、本展のタイトルになったそうです。是非みなさん、本物を拝見し、作品をご購入できるチャンスですので、お見逃しなく。

2021年2月15日~銀座にて個展開催!


対談プロフィール

龍村周

錦の伝統織物作家、書道・篆刻・陶芸作家。
1974年生まれ、京都府出身。東京造形大学卒。創業1894年。株式会社龍村光峯/代表取締役(2012~)一般財団法人日本伝統織物研究所/代表理事(2019~)同志社大学プロジェクト科目嘱託講師(2010~)歴史文化工学会理事(2015~)京都市伝統産業「未来の名匠(西陣織)」に認定(2018)曽祖父:初代龍村平蔵(号・光波)祖父:二代龍村平蔵(号・光翔)父:龍村光峯(織物美術家)
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竹村文禅

(一社)日本伝統文化協会会長。
現代、そして未来において、伝統文化が持つ価値をどのように見出し、次代に継承していくべきか。生活者の視点、企業人としての視点で、伝統文化の価値のリブランディングを目指し本協会を設立。
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書いた人

ルミコ ハーモニー
アーティスト。世界の様々な芸術に触れるにつれ、如何に日本の芸術が世界に影響を及ぼしているのかを実感。2019年末に「アートだるま展」を主催した際に、一般社団法人日本伝統文化協会の後援をきっかけに、日本伝統文化を学び始めた一年生。
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