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能からのメッセージ「六浦」(むつら)

自粛期間中、宝生流シテ方 佐野登師が能の演目の解説を日々発信してこられました。「能」が発信するメッセージを少しでもお伝えできればとコラムにさせていただきました。


「功成り名遂げて身退くは天の道なり」

「功成り名遂げて身退くは天の道なり」という言葉があります。功名を立てて名誉を得たら、いつまでもその地位にとどまっていないで、我が身を退けるのが自然の道であり、それが功績を汚さない身の処し方である。という意味です。惜しまれて辞めるぐらいがいいと言う事ですね。

この事をテーマにした能に「六浦」(むつら)という演目があります。

都の僧が相模国六浦の称名寺を訪ねると、まわりの木々が紅葉しているのに、一本だけ紅葉していない楓を見つけます。そこで出会った女性にその事を尋ねると、昔ここを訪れた歌人藤原為相が、他の木々が紅葉していないのに一本だけ紅葉している楓を称え歌に詠んだ事を名誉に感じ、以後その楓は、身を退き紅葉しなくなった話をします。私こそがその楓の精であると姿を消し、夜になり僧が弔っていると、楓の精が現れ草木も成仏できる仏徳をたたえ、美しい舞を見せ四季の草木の美しさを語り消え失せます。

メッセージ

この楓は、まわりの木々が紅葉しても、紅葉しなくても、まわりに惑わされず己の軸が定まっていたから「功成り名遂げて身退くは天の道なり」に繋がったのだ、と私は強く感じています。
それこそがこの曲の大事なテーマと思い、楓の精の素直な心と美しさを表せれる様に演じました。草木の精の役は難しいです。© 2020 noborusano All Rights Reserved.


ご紹介

能楽師・佐野登師は、能楽師として第一線で活躍する一方で、能を使った教育や地域活性化の取り組みを精力的に展開されています。小山龍介氏との対談『佐野登の能からのインスピレーション』でも興味深いメッセージを発信されています。

佐野 登(さの のぼる)
能楽師シテ方(宝生流)
一般社団法人 日本能楽謡隊協会 代表理事
重要無形文化財総合指定(能楽)保持者。(社)日本能楽会及び(社)能楽協会会員。
https://www.facebook.com/nohgaku/

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