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【連載】VR茶碗 第壱話

【連載】VR茶碗 第壱話

VR茶碗で2018年度グッドデザイン賞受賞

同僚達とゆっくりと、小さく始めた取り組みが、周りの皆様からご縁を頂戴したり、繋いで頂いたりしながら、お陰様で2018年度グッドデザイン賞受賞という形になった。伝統文化を土俵に、新規ビジネスの創出を日々模索している立場として、日頃思っていることをつらつら書いてみようと思う。

・2018年度グッドデザイン賞:
VRコンテンツ [美術館・博物館収納物VRアーカイブ]

きっかけは、zSpaceというスタートアップが展開しているVRデバイスに触れる機会を得たことだった。操作した瞬間、高貴過ぎて手に触れることのできないお茶碗を基にVR茶碗を創って、自由視点、重力無視、拡大、割っちゃう(笑)など、VRならではの展示スタイルが美術館にウケるんじゃないかとの仮説が閃き、この想いだけで活動を開始した。

ぶっちゃけ、このコンセプトに関しては、茶道仲間に語ると「絶対に実現して!」の声しか聞こえてこなかったので、根拠lessな自信を持っていた。

コンセプト検証の最中に神降臨

活動を始めた直ぐの頃、後に、VR茶碗を製作してくれることになる社内のデザイナーの方に、展示会でたまたまお会いした。コンセプトを共有したところ大いに共感して下さり、「やりましょう!」と盛り上がった。

速攻で社内にある簡易3Dスキャナで、当方が所有するお茶碗に基づいてVR茶碗を創れないか試してもらったものの、高精細なものは創れず、時間が流れることに・・・

その後、高精細なVR茶碗を創れる技術を持つ会社の目途は立ったのだが、その費用は誰が出すのかという話になり、今度はこちらの目途が立たないまま、また時間が流れることに・・・

その間は、とにかくzSpaceに興味を持って下さる社内の営業やお客様にお会いする度に、同僚と一緒に仮説をぶつけまくる日々。

超絶神対応な推進部の方ともコラボして、お客様をデモにお呼びし、体験&ディスカッションを繰り返すものの、実際のVR茶碗がないことにはお客様も具体的に検討を進めることができず、またまた時間が流れることに。

すると、ひょんなことから、神(出資者)が降臨する。

同僚が神(出資者)を口説いてくれたのだが、神(出資者)は、京都市”外”にも旅行されるリヴェラルアーツに対する造詣が深い方で、イノヴェーションが叫ばれるこのご時世、ハコ&VRコンテンツの売り切り(将来的にはVRコンテンツの流通ビジネスを展開したいとは本気で思っているが)のビジネスモデルしか描けていなかった案件に対する出資の意思決定をして下さった。

価値の尺度が変わる世界において

これには、正直、驚愕した…。儲かるか分からないものに投資されるということは、資本主義にけっこう反するからだ(笑)。

ただ、同時に、着物で世界中を旅される方にお会いした時に伺ったエピソードで刺さったフレーズ、

「この資本主義絶対の時代でも、ヒトが旅する先はマチュピチュやピラミッドなど、現代の資本主義の原理では絶対に創れない場所だよねー。」

を思い出した。

このVR茶碗、拡大はできるものの、当方所有の単なるお茶碗をただそのまま高精細にスキャンして、VRコンテンツにしただけのもので、誰も買ってはくれないだろうし、資本主義の原理には反すると思う。

ただ、上述のフレーズのように、ヒトは資本主義の原理では絶対に創れないモノに惹かれる性質を持つとすると、この神(出資者)はその魔力に一瞬取り込まれて、意思決定をして下さったのかもしれない。

こうして、めでたくVR茶碗は完成した(著作権の関係上、結局、公には披露は出来ないという見事なオチ付きなのだが…(笑))。

同僚のアグレッシヴな口説きはあったものの、この神(出資者)が意思決定して下されなければ、今回のタイミングでの受賞は絶対になかったと考えると、今回のゴラッソは、全てこの神(出資者)の成果なのではないだろうか?新規ビジネスが創出されるきっかけというものはいつの時代でも何とも不思議だ…。

書いた人

シロー
冬木喜平次を超絶リスペクトする流離のUrasenker。
zSpaceを活用した大名物級お茶碗のVR展示を国内外の有名美術館に浸透させるべく活動中。
趣味は蹴球で、ポジションはDFならどこでも対応可能なユーティリティー性も持つ。
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