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旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~ 愛知県 岡崎康生通り

旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~ 愛知県 岡崎康生通り

文化財・社寺修復を手掛ける塗師の旅がらすによるコラム長期連載です。シリーズタイトルは「旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~」。様々な季節、日本各地の街並みを探訪、古の遺構にも目を向け、社寺修復塗師ならではの視点で綴っていきます。肩の力を抜いてお楽しみいただければ幸いです。

 

岡崎、康生通り(こうせいどおり)。
岡崎城に程近いこの界隈には、かつては岡田屋や松坂屋、メルサ、セルビなどの百貨店が犇めき、戦後復興から岡崎の中核を担っていた中心地だった。それも今では旧岡田屋のシビコを一部残すのみで、そのシビコも四階から上は永久改装中である。
そんな賑わいを失った康生通りにいつも人だかりの絶えない場所がある。老若男女に愛される岡崎市民のおやつ番「和泉屋」。
江戸時代からの老舗という訳でもなく、かといって奇をてらった風でもない、至って普通の和菓子屋だ。町の人達は正直なもので、魅力のあるところには自然と人が集まる。そこには、昨日今日こちらにやって来た僕の目にさえ引き寄せられる何かがある。同じ土地で長い間同じ味を守り続けてきた。ただそれだけが得も言われぬ趣と安心感を醸し出しているように見える。
陳列台には目移りしてしまう程の大福や饅頭が溢れんばかりに並ぶ。ほんのり香ばしく焼けた団子に甘過ぎないみたらしが絡み、なんとも素朴で団子らしい味がする。中でおでんをつまむもよし。
愛され続けて七十余年、守られてきた伝統が寂れた街の片隅でこれからも岡崎市民の胃袋を満たし続けていくだろう。

トリビア

岡崎康生町という地名は、徳川家康生誕の地であることに由来します。旧中心市街地を南北に貫く、かつては市電が走っていた本町通りの康生北交差点を中心に東を東康生通り、西を西康生通りと呼びます。総じて通称康生通り(こうせいどおり)として親しまれ、地名としても康生通という名称が使われ残っています。
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