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旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~ 東京都 池袋自由学園明日館

旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~ 東京都 池袋自由学園明日館

文化財・社寺修復を手掛ける塗師の旅がらすによるコラム長期連載です。シリーズタイトルは「旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~」。様々な季節、日本各地の街並みを探訪、古の遺構にも目を向け、社寺修復塗師ならではの視点で綴っていきます。肩の力を抜いてお楽しみいただければ幸いです。

使い続ける文化財 ―自由学園明日館―
ごく近くに住んでいながら、なかなか行けずにいた場所があった。池袋の雑踏を抜けた住宅街にひっそりと佇む自由学園明日館。近代建築界の巨匠、フランク・ロイド・ライトと弟子の遠藤新の設計により大正10年に建てられた女学校だ。
軒高を抑え水平線を強調し全体を区切らず緩やかに繋ぐ、ライトならではのプレーリースタイル(草原様式)に幾何学的なデザイン。大きな窓から射し込む日差しと庭の芝生が青々と鮮やかに映る。創設者である羽仁夫妻の教育理念に共感し建築で表現しようとした意匠が随所に見られる造りである。ライトが好んで採り入れていた大谷石も多く使われている。
震災や空襲にも耐えてきた建物だが、1960年、70年代頃には立ち入ることも出来ない程に老朽化が進み、取り壊しも検討されていた。学園OBや多くの建築家の永きにわたる保存運動により1997年、国の重要文化財となり保存・修復工事が行われた。
自由学園明日館は建造物を使いながら保存する、いわゆる動態保存のモデルケースとなっており、見学のみならず、公開講座やコンサート、結婚式まで挙げられる、いわば使い続ける文化財なのだ。
かつての女学生達の学舎に思いを馳せながら、今は全ての人が生涯学習の場としてまた憩いの場として学び、癒されている。
使わなかったら傷んでしまうし、使ってこそ活かされる。触れてみて本当の価値を分かって貰うことで大切する心を育む。文化財保存の良い形ではないだろうか。

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