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旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~ 愛知県 半田市(後編)

旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~ 愛知県 半田市(後編)

文化財・社寺修復を手掛ける塗師の旅がらすによるコラム長期連載です。シリーズタイトルは「旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~」。様々な季節、日本各地の街並みを探訪、古の遺構にも目を向け、社寺修復塗師ならではの視点で綴っていきます。肩の力を抜いてお楽しみいただければ幸いです。

蔵と運河のミツカン王国 ―愛知県半田市―
紺屋海道に戻り北上を続ける。黒壁の古い家が多く残る海道沿いから国道に出たところで、これまた歴史を感じるレンガの建物が目に飛び込んでくる。ここ半田で連綿と受け継がれてきた醸造文化は、明治に入り今度はビールづくりという場に於いて世界を目指すこととなる。
明治22年、中埜酢店四代目中埜又左衛門と敷島製パン創業者盛田善平らにより「丸三ビール」なる瓶詰めビールの生産を開始、同31年新ビール工場となる半田赤レンガ建物を竣工。ビール産業黎明期に4大ビールメーカーに立ち向かったカブトビールの誕生となる。その後会社は譲渡や合併を繰り返し、第二次世界大戦を迎え半田工場は閉鎖する。戦争の記憶も伝えるこの建物は修復を終え、カフェ併設のミュージアム兼クラブハウスとしてリニューアル。カフェでは復刻された生カブトが味わえる。
赤レンガ建物からさらに進むと、宮池という溜池と共に入水神社(住吉神社)が鎮座する。住吉大神は元々、神功皇后の新羅征伐に際して住吉三神を奉ったという由来から、海の神として崇められているので、まず大阪の住吉大社がそうである様に、かつての海に面し、社殿は海に向かい、海上の船から見渡せる様に建っている筈である。したがってこの場所もまた、いつの時代か海岸であり、この宮池が入り江であったと考えても不思議はない。
想像を掻き立てる崖と傾斜、水路に暗渠、そして江戸、明治から大正、昭和と時代の変遷を感じさせる街並み。今回、僅か2時間という短い時間、限られた区域でこれだけの魅力を見せてくれた半田町歩き。まだまだ見どころは沢山ありそうだ。
海寄りの亀崎を通りJRで半田市街に入れば、旧国鉄からの古い駅舎や海側からの視界を堪能出来るのではないだろうか。さらに、ごんぎつねで知られる童話作家 新美南吉の生まれ故郷でもあるこの町には、南吉ゆかりの景色や建物が当時の様子を今に伝えている。大正から昭和にかけての暮らしぶりや、景色を堪能しながら散策するのもまたひとつの魅力。
そして博物館「酢の里」は、ミツカンミュージアムとしてリニューアルオープン。名古屋から名鉄特急で30分。名古屋へ来たら一歩足を伸ばして、お酢の香りに浸りに行ってみてはいかがだろうか。
思いの外、長くなってしまいましたが、前編、中編、後編と最後までお読みくださったみなさまに感謝します。

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