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旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌 鎌倉(後編)

旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌 鎌倉(後編)

文化財・社寺修復を手掛ける塗師の旅がらすによるコラム長期連載です。シリーズタイトルは「旅がらすの日曜日 ~社寺修復塗師の街並み散策日誌~」。様々な季節、日本各地の街並みを探訪、古の遺構にも目を向け、社寺修復塗師ならではの視点で綴っていきます。肩の力を抜いてお楽しみいただければ幸いです。

今暫く鎌倉話を。

裏駅から市役所方面へ向かうと紀ノ国屋の少し先にスターバックスがある。かつて漫画家の横山隆一先生の邸宅があったこの場所は、庭のプールと藤棚や桜がそのまま残されているため、ちょっと知られた人気のスポットとなっている。ちなみに店内にはフクちゃんの原画も残っている。

日帰り観光地の色が強い鎌倉では、夜ともなるとどんな繁盛店でも割りかし空いていて、ここもまた例外ではない。テラスを抜ける風がプールの水面を優しく揺らす様に人々もまた思い思いの時間をゆったりと過ごしている。

ところで、ある種カルチャーとも言えるこのスターバックスを日本に持ち込み、トレンドとして確立させた人がいるのをご存知だろうか。鎌倉の隣、逗子の名家で代々スズキヤというスーパーを営んできた鈴木家の次男、角田雄二氏と三男、鈴木陸三氏こそその人物である。

角田雄二氏と鈴木陸三氏

角田雄二氏は葉山の老舗日本料理屋、日影茶屋の婿養子となった後、アメリカで日影茶屋(チャヤ)を展開させてきた。帰国後は陸三氏と共にスターバックス コーヒー ジャパンを展開、現CEOでもある。

また鈴木陸三氏はサザビーリーグの会長であり、サザビーに始まり、アフタニューンティーやアニエスb、最近だとロンハーマンなどを国内に取り入れ絶えず時代を創ってきたスーパーマンである。
氏らの成功のカギは、生まれ育った環境で培われた商才やセンスの良さに加え、時代の一歩二歩先を見据える先見の明を持っていたことに他ならないが、何よりも僕らが見習うべきはその類い稀な行動力ではないかと思う。

御成のスタバは、ただのチェーン店の枠では収まらない新しいコンセプトストアの形として、歴史と品格のある鎌倉の街にふさわしく存在している。ここでもまた一歩先を行っている。

ちなみに逗子駅前のスタバは、スズキヤ、スタバ、チャヤの三店コラボになっている。かつてこの場所にあったチャヤ(洋菓子部門)のケーキ売場と喫茶室はとても落ち着ける空間で待ち合わせにもうってつけだったが、時代の流れでスタバになってしまった。チャヤとのコラボが精一杯だったかと、少し残念に思う。

横山隆一先生の愛した庭を眺めながら、フクちゃんの絵描き歌を思い出していた。今でも描ける(о´∀`о) 鎌倉はいい街だとつくづく思う。鎌倉の街は鎌倉の人達がプライドと気品を保ちながら自ら守っている様に感じる。対し、利便性ばかりを求めていくとその街らしさが薄れていく。そういった意味で今の日本の中核都市は大概”らしさ”を棄ててしまった。

不便さの中にもゆとりが感じられる鎌倉という街は心も豊かにしてしてくれる素敵な街だと改めて思った。今度はここの藤棚が満開の花をつける頃に帰って来たいと願いつつ……

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